2026年8月31日、金融庁が令和9年度税制改正要望を出しました。 20件あるうちの16件目は「生命保険料控除制度の拡充の恒久化等」で、要望の内容はこう書かれています。
金融庁「生命保険料控除制度の拡充の恒久化等」(令和9年度税制改正要望事項)1ページ。令和8年・9年分所得税において講じられた、23 歳未満の扶養親族を有する場合の一般生命保険料控除枠の所得控除限度額に対する2万円の上乗せ措置を恒久化するなど所要の措置を講ずること。
恒久化を求めているということは、いまは期限が付いているということです。 国税庁も、同じことを逆側から書いています。
国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」6ページ。⑵ 年齢23歳未満の扶養親族を有する場合の生命保険料控除の特例(7ページ2参照)の適用期限が令和9年分(改正前:令和8年分)まで延長されました。
同じ要望書には、国税庁「民間給与実態統計調査」から取った実績も載っています。令和6年の一人当たりの一般生命保険料控除額は3.6万円。 改正前の限度額にも届いていません。
結論
この特例は「限度額が上がる」制度であって、「お金がもらえる」制度ではありません。 増えるのは所得から引ける金額です。実際に減る税金は、そこに自分の限界税率を掛けた分だけになります。
そして、上乗せの全部を受け取れる人は多くありません。 限度額まで引き上げてもらうには、平均よりかなり多く保険料を払っている必要があります。平均的な支払額の人は、上乗せの一部しか使えません。
天井は二重になっています。 一般の枠の上限が引き上げられた一方で、三つの控除を合計したときの上限は据え置かれました。介護医療保険と個人年金保険の枠をすでに使い切っている人には、引き上げ分がまったく残りません。
効くのは所得税だけです。 個人住民税の側は、この改正の対象になっていません。したがって、所得控除が増えたのにふるさと納税の上限額は動きません。
古い契約しか持っていない人には効きません。 引き上げられたのは新しい契約に係る枠のほうで、古い契約だけの人の限度額はそのままです。
最後に、期限があります。 所管の官庁は恒久化を求めていますが、決まるのは12月ごろの税制改正の大綱より後です。
計算の前提
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 対象の税 | 所得税(個人住民税は別に扱う) |
| 適用年分 | 令和8年分・令和9年分 |
| 契約の区分 | 新契約=平成24年1月1日以後に締結した保険契約等/旧契約=平成23年12月31日以前に締結した保険契約等 |
| 控除額の表 | 国税庁「No.1140 生命保険料控除」[令和8年4月1日現在法令等] |
| 合計適用限度額 | 12万円(一般・介護医療・個人年金の合計。改正前と同じ) |
| 個人住民税 | 地方税法314条の2第1項第5号。合計7万円、新生命保険料だけなら最高28,000円 |
| 限界税率 | 所得税の速算表の税率。復興特別所得税は基準所得税額の2.1% |
| 社会保険料 | 給与収入の15%(当サイトのシミュレーターの既定値。実額ではない) |
| 家族 | 配偶者は共働きで扶養に入らない。子は15歳が1人(扶養控除の対象外だが、23歳未満の扶養親族には当たる) |
| 端数 | 課税所得は1,000円未満切捨て(国税通則法118条1項) |
scripts/calc-seimei-hoken.mjs で行い、出力を転記しました。ふるさと納税の上限額は、当サイトのシミュレーターと同じ src/lib/furusato.js を呼んで計算しています。
① 上乗せは「新しい契約」の枠にしか効かない
租税特別措置法41条の15の5は、所得税法76条の文言を置き換える形で書かれています。条文には、置き換える前と後の言葉が並んでいます。
e-Gov法令検索「租税特別措置法」41条の15の5第1項。同項第一号イ中「二万円」とあるのは「三万円」と、同号ロ中「二万円」とあるのは「三万円」と、「四万円」とあるのは「六万円」と、同号ハ中「四万円」とあるのは「六万円」と、「八万円」とあるのは「十二万円」と、「三万円」とあるのは「四万五千円」と、同号ニ中「八万円」とあるのは「十二万円」と、「四万円」とあるのは「六万円」と、同項第三号中「四万円」とあるのは「六万円」とする。
読み替えられているのは第一号と第三号だけで、第二号がありません。 所得税法76条1項の第一号は新生命保険料を支払った場合、第二号は旧生命保険料だけを支払った場合、第三号は両方を支払った場合です。つまり旧契約しか持っていない人の枠は、一言も動いていません。
国税庁の一覧表も同じ書き方になっています。
| 区分 | 令和8年分の控除額 |
|---|---|
| 新生命保険料 | 最高 40,000円 ※年齢23歳未満の扶養親族を有する場合には最高60,000円 |
| 旧生命保険料 | 最高 50,000円 |
| 新生命保険料と旧生命保険料の両方 | 最高 40,000円 ※年齢23歳未満の扶養親族を有する場合には最高60,000円 |
| 介護医療保険料 | 最高 40,000円 |
| 新個人年金保険料 | 〃 40,000円 |
| 旧個人年金保険料 | 〃 50,000円 |
| 新個人年金保険料と旧個人年金保険料の両方 | 〃 40,000円 |
※が付いているのは、上の2行だけです。 一般の生命保険料の3行のうち、※が無いのは「旧生命保険料」の行だけ。平成23年12月31日以前に入った保険だけで家計の保障をまかなっている人は、子が何人いても上乗せを受けられません。介護医療保険料と個人年金保険料の各行にも※は付いていません(③のとおり、これらの枠は広がっていません)。
② 満額の上乗せには、新生命保険料が年120,000円要る
控除額の表は、保険料が増えるほど傾きがゆるくなる形をしています。上乗せの特例は、その表の折れ目を右へずらしたものです。年間の新生命保険料ごとに、控除額がどう変わるかを並べます。
| 年間の新生命保険料 | 通常の控除額 | 23歳未満の子がいる場合 | 差 | (参考)個人住民税 |
|---|---|---|---|---|
| 20,000円 | 20,000円 | 20,000円 | 0円 | 16,000円 |
| 30,000円 | 25,000円 | 30,000円 | 5,000円 | 21,000円 |
| 40,000円 | 30,000円 | 35,000円 | 5,000円 | 24,000円 |
| 60,000円 | 35,000円 | 45,000円 | 10,000円 | 28,000円 |
| 80,000円 | 40,000円 | 50,000円 | 10,000円 | 28,000円 |
| 100,000円 | 40,000円 | 55,000円 | 15,000円 | 28,000円 |
| 120,000円 | 40,000円 | 60,000円 | 20,000円 | 28,000円 |
| 150,000円 | 40,000円 | 60,000円 | 20,000円 | 28,000円 |
上乗せの幅は、保険料の額によって0円から20,000円まで変わります。 満額の20,000円になるのは年120,000円、つまり月10,000円を払っている場合からです。
| 上乗せしたい額 | 必要な年間の新生命保険料 |
|---|---|
| 5,000円 | 年30,000円(月2,500円) |
| 10,000円 | 年60,000円(月5,000円) |
| 15,000円 | 年100,000円(月8,333円) |
| 20,000円 | 年120,000円(月10,000円) |
ここで①の実績を思い出してください。金融庁が要望書に載せた国税庁「民間給与実態統計調査」では、令和6年の一人当たりの一般生命保険料控除額は3.6万円でした。改正前の限度額4万円にも届いていません。
同じ表は、給与所得者のうち一般生命保険料控除を使っている人の割合も載せています。
| 令和3年 | 令和4年 | 令和5年 | 令和6年 | |
|---|---|---|---|---|
| 一般生命 | 69.5 | 69.1 | 68.3 | 65.5 |
| 介護医療 | 54.3 | 56.1 | 57.0 | 55.7 |
| 個人年金 | 16.9 | 16.5 | 16.2 | 16.6 |
一般生命の適用者割合は、令和3年の69.5%から令和6年の65.5%へ下がり続けています。 控除額の平均も3.8万円から3.6万円へ下がっています。上乗せの器は広がりましたが、そこに入れる保険料のほうが減っているという形です。
③ もう一つの天井 ― 三つを合わせて12万円
一般の枠が広がっても、三つの控除を合わせた上限は12万円のまま据え置かれました。 財務省の大綱が、わざわざ注を付けています。
財務省「令和7年度税制改正の大綱」10ページ。(注)一般生命保険料控除、介護医療保険料控除及び個人年金保険料控除の合計適用限度額は12 万円とする(現行と同じ。)。
介護医療保険料控除と個人年金保険料控除の合計額がいくらかによって、上乗せが実際に何円残るかが変わります。
| 介護医療+個人年金の控除額 | 上乗せ前の合計 | 上乗せ後の合計 | 実際に増える控除 |
|---|---|---|---|
| 0円 | 40,000円 | 60,000円 | 20,000円 |
| 40,000円 | 80,000円 | 100,000円 | 20,000円 |
| 60,000円 | 100,000円 | 120,000円 | 20,000円 |
| 70,000円 | 110,000円 | 120,000円 | 10,000円 |
| 80,000円 | 120,000円 | 120,000円 | 0円 |
| 介護医療・個人年金なし | 合わせて60,000円 | 合わせて70,000円 | 合わせて80,000円 | |
|---|---|---|---|---|
| 上乗せがなくても使えていた控除額 | 40,000 | 100,000 | 110,000 | 120,000 |
| 上乗せで増えた分 | 20,000 | 20,000 | 10,000 | 0 |
| 合計 | 60,000 | 120,000 | 120,000 | 120,000 |
右の3本は棒の高さが同じです。合計適用限度額の12万円で頭を打っているためで、上の色(上乗せで増えた分)が右へ行くほど薄くなり、一番右では消えます。介護医療保険料控除は最高40,000円、個人年金保険料控除も新契約なら最高40,000円(旧個人年金保険料だけなら50,000円)なので、両方を使い切っている人が一番右の状態です。
介護医療保険と個人年金保険の枠を両方とも使い切っている人には、この上乗せは1円も届きません。 保険をよく掛けている世帯ほど効かない、という向きになっています。
④ 「23歳未満の扶養親族」には、扶養控除が使えない子も入る
この特例がいう扶養親族は、所得税法2条1項34号の扶養親族です。 措置法41条の15の5第1項が「所得税法第二条第一項第三十四号に規定する扶養親族をいう」と直接引いています。
扶養控除とは別の話です。 扶養控除は16歳以上の扶養親族が対象ですが、扶養親族という言葉そのものは0歳から使われます。したがって0歳の子でも、この特例では数えられます。 児童手当の対象年齢でもありません。数えるのは23歳未満というだけです。
ただし、扶養親族には所得以外の条件も付いています。 定義の原文はこうです。
e-Gov法令検索「所得税法」2条1項34号。太字は引用者。合計所得金額の要件は、後述のとおり令和8年分から62万円以下に引き上げられている(e-Gov の条文はまだ58万円のまま)。三十四 扶養親族 居住者の親族(その居住者の配偶者を除く。)並びに(略)里親に委託された児童及び(略)養護受託者に委託された老人でその居住者と生計を一にするもの(第五十七条第一項に規定する青色事業専従者に該当するもので同項に規定する給与の支払を受けるもの及び同条第三項に規定する事業専従者に該当するもの(略)を除く。)のうち、合計所得金額が五十八万円以下である者をいう。
「生計を一にする」が要ります。 子が就職して自分の収入で暮らしているなら、23歳未満でも扶養親族ではありません。ただし、別居していれば直ちに外れるわけでもありません。
国税庁「令和8年版 源泉徴収のあらまし」43ページ。日常一緒に生活していない場合でも、勤務や修学の余暇には家に帰ってくる場合や、常に生活費や学資金、療養費等が送金されている場合は、生計を一にしていることになります。 なお、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとして取り扱われます(所基通2−47)。
下宿している学生の子は、仕送りをしていれば生計を一にするものとして扱われます。 逆に、自分の店を手伝わせて青色事業専従者給与を払っている子は、扶養親族から外れます。
所得の条件は、令和8年分からは合計所得金額62万円以下です。
財務省「令和8年度税制改正の大綱」3ページ。① 同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件を62 万円以下(現行:58 万円以下)に引き上げる。
令和8年分の給与所得控除の最低保障額は74万円なので、収入が給与だけなら年収136万円以下が目安になります。大学生の子がアルバイトをしている場合は、ここを超えていないかを確認してください。
判定するのは12月31日の時点です。 条文がそう定めています。
e-Gov法令検索「租税特別措置法」41条の15の5第2項。2 前項の場合において、その者が年齢二十三歳未満の扶養親族に該当するかどうかの判定は、令和八年十二月三十一日(その居住者が年の中途において死亡し、又は出国(略)をする場合には、その死亡又は出国の時)の現況による。ただし、その判定に係る者がその当時既に死亡している場合は、その死亡の時の現況による。
年の途中で23歳になった子は、その年から外れます。 逆に、12月に生まれた子は、その年から数えられます。
⑤ 共働きなら、夫婦の両方が使える
扶養控除は、同じ子を夫婦の両方で使うことはできません。この特例は違います。
国税庁「令和8年版 源泉徴収のあらまし」61ページ。2 上記2⑾イ②の年齢23歳未満の扶養親族を有する場合の生命保険料控除の特例を受ける場合において、2以上の所得者が扶養する親族が年齢23歳未満の扶養親族に該当するときは、いずれの所得者も年齢23歳未満の扶養親族を有することとなり、年齢23歳未満の扶養親族を有する場合の生命保険料控除の特例の適用を受けることができます(措通41の15の5−1)。
子は1人でも、夫婦それぞれが自分の保険料で上乗せを受けられます。 夫婦がそれぞれ新生命保険料を年120,000円以上払っていれば、世帯としての所得控除は40,000円増えます。
ただし、生命保険料控除そのものの要件は別にあります。所得税法76条5項は、控除の対象になる新生命保険契約等を「これらの新契約又は新規約に基づく保険金等の受取人のすべてをその保険料若しくは掛金の払込みをする者又はその配偶者その他の親族とするもの」と定めています。契約者が誰かではなく、保険料を払ったのが誰か、受取人が誰かで決まります。 夫が払った保険料を妻の控除にすることはできません。
⑥ 個人住民税は1円も増えない
この上乗せは所得税だけのものです。 財務省の大綱を見ると、生命保険料控除を含む章の地方税の部分は、こう書かれています。
財務省「令和7年度税制改正の大綱」12ページ。(地方税) 個人住民税について、所得税における(2)及び(3)の見直しに伴い、所要の措置を講ずる。この措置による個人住民税の減収額は、全額国費で補塡する。
この章(「3 子育て支援に関する政策税制」)の国税は、(1)が生命保険料控除、(2)が住宅ローン控除、(3)が東日本大震災の被災者等に係る住宅ローン控除の特例、(4)が既存住宅の子育て対応改修の税額控除です。 挙げられているのは(2)と(3)だけで、(1)はありません。翌年の財務省「令和8年度税制改正の大綱」を全文検索しても、「生命保険料控除」が出てくるのは国税の側の1か所だけです。
個人住民税の生命保険料控除は、地方税法314条の2第1項第5号がそのまま残っています。新生命保険料だけなら最高28,000円、旧生命保険料だけなら最高35,000円、三つを合わせて最高70,000円です。②の表の一番右の列が28,000円で止まっているのは、このためです。
⑦ 所得税はいくら減るか。ふるさと納税の上限額は動かない
控除が20,000円増えたとき、減る所得税は限界税率で決まります。
| 所得税の限界税率 | 減る所得税(復興特別所得税を含む) |
|---|---|
| 5% | 1,021円 |
| 10% | 2,042円 |
| 20% | 4,084円 |
| 23% | 4,697円 |
| 33% | 6,739円 |
設例で確かめます。給与収入600万円、15歳の子が1人、新生命保険料は年120,000円(月10,000円)、介護医療保険と個人年金保険には入っていないとします。
| 上乗せ前 | 上乗せ後 | |
|---|---|---|
| 生命保険料控除(所得税) | 40,000円 | 60,000円 |
| 所得税の課税所得 | 2,380,000円 | 2,360,000円 |
| 所得税額(速算表) | 140,500円 | 138,500円 |
| 生命保険料控除(個人住民税) | 28,000円 | 28,000円 |
| 個人住民税の課税所得 | 3,002,000円 | 3,002,000円 |
| 個人住民税の所得割額 | 297,700円 | 297,700円 |
| ふるさと納税の控除上限額 | 76,000円 | 76,000円 |
所得税は2,000円減り、復興特別所得税が42円減ります。合わせて2,042円です。 上の表の税率10%の行と一致します。
そして、ふるさと納税の上限額は1円も動きません。 これは設例の偶然ではありません。総務省の説明による上限額の式は次のとおりです。
上限額 = 個人住民税の所得割額 × 20% ÷(90% − 所得税の税率 × 1.021)+ 2,000円
この式に入るのは、個人住民税の所得割額と、個人住民税の課税総所得金額から人的控除差調整額を差し引いた金額で判定した所得税の税率の2つだけです。 どちらも個人住民税の課税所得から決まります。⑥のとおり個人住民税の生命保険料控除は改正されていないので、式に入る数値が両方とも動きません。
給与収入を変えて確かめても、差はすべて0円でした。
| 給与収入 | 式に入る所得税の税率 | 上乗せ前の上限額 | 上乗せ後の上限額 | 差 |
|---|---|---|---|---|
| 4,000,000円 | 5% | 41,000円 | 41,000円 | 0円 |
| 5,000,000円 | 10% | 60,000円 | 60,000円 | 0円 |
| 6,000,000円 | 10% | 76,000円 | 76,000円 | 0円 |
| 8,000,000円 | 20% | 128,000円 | 128,000円 | 0円 |
| 10,000,000円 | 20% | 176,000円 | 176,000円 | 0円 |
⑧ いつまでの制度か
この特例には、三度の税制改正を経た履歴があります。金融庁の要望書が、自分で経緯を書いています。
金融庁「生命保険料控除制度の拡充の恒久化等」4ページ。本制度の拡充については、平成27(2015)年度税制改正より継続して要望しており、令和6年度要望においては、子育て世帯に対する控除を手厚くするよう要望したところ、令和6年度税制改正では手当されず、税制改正大綱において、令和7年度税制改正で検討し結論を得ることとされ、令和7年度税制改正では、令和8年中の1年間の時限的な措置とされた。 令和8年度要望においては、恒久的な措置とするよう要望したところ、令和8年中とされていた適用期限を1年延長することとされた。
恒久措置を求める要望に、1年かぎりの措置で応じる形が2年続いています。 令和7年度の要望も、令和8年度の要望も、「租税特別措置の適用又は延長期間」の欄は「恒久措置とする。」でした。返ってきたのは、令和7年度改正での令和8年分かぎりの創設と、令和8年度改正での1年の延長です。令和9年度の要望でも「恒久措置とする。」と書かれていますが、通るかどうかは12月ごろの税制改正の大綱を見るまで分かりません。今年の要望は208項目あり(重複を除くと124項目)、そのうち金融庁のものが20項目です。
e-Gov の条文を見ると、1年で終わるように読める
2026年9月23日時点で、e-Gov法令検索の租税特別措置法41条の15の5は「令和八年分」のままです。 令和8年度改正による1年の延長が反映されていません。条文だけを見ると令和8年分かぎりの制度に読めてしまいます。
適用年を確定させるときは、国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」の次の一文を見てください。
国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」7ページ。括弧書きも原文のまま。この改正は、令和8年分の所得税について適用されます(令和8年度の税制改正により、この適用期限は令和9年分まで延長されました。)。
⑨ 年末調整では、保険料控除申告書の側を確認する
措置法41条の15の5第3項は、所得税法196条1項(給与所得者の保険料控除申告書)の文言も置き換えています。
e-Gov法令検索「租税特別措置法」41条の15の5第3項の読替表。事項を → 事項並びに租税特別措置法第四十一条の十五の五第一項(年齢二十三歳未満の扶養親族を有する場合の生命保険料控除の特例)に規定する扶養親族の氏名及び個人番号(個人番号を有しない者にあつては、氏名)その他の財務省令で定める事項を
保険料控除申告書に、23歳未満の扶養親族の氏名と個人番号を書くことになります。 扶養控除等申告書に子の名前を書いてあるから自動的に反映される、という形ではありません。財務省の大綱も「給与所得者の保険料控除申告書等についてその記載事項の見直しを行う」としています。
ただし、個人番号のほうは省略できる場合があります。 同じ読替表は、所得税法198条4項(帳簿を備えている場合に個人番号の記載を要しないとする規定)の対象に「給与所得者の保険料控除申告書」を加えています。勤務先が、先に出した扶養控除等申告書などから作った帳簿に子の氏名と個人番号を記載して備えているときは、その番号を書かなくてよいという意味です。条文にはただし書が付いていて、申告書に書くべき氏名や個人番号が帳簿のものと違うときは省略できません。
e-Gov法令検索「所得税法」198条4項。太字の「又は給与所得者の特定親族特別控除申告書」が、措置法41条の15の5第3項の読替表で「、給与所得者の特定親族特別控除申告書又は給与所得者の保険料控除申告書」に置き換わる。4 給与所得者の扶養控除等申告書、(略)又は給与所得者の特定親族特別控除申告書(以下この項において「扶養控除等申告書」という。)の提出を受ける給与等の支払者が、(略)氏名及び個人番号その他の事項を記載した帳簿(略)を備えているときは、その給与等の支払を受ける者は、(略)当該帳簿に記載されている個人番号の記載を要しないものとする。ただし、当該扶養控除等申告書に記載されるべき氏名又は個人番号が当該帳簿に記載されている源泉控除対象配偶者等の氏名又は個人番号と異なるときは、この限りでない。
ただし、令和8年分の様式そのものは、2026年9月23日の時点でまだ公開されていません。 国税庁の「年末調整がよくわかるページ」は令和7年分のままで、冒頭にこう書かれています。
国税庁「年末調整がよくわかるページ(令和7年分)」。※令和8年分の情報については、10月頃公開予定です。
勤務先から配られる様式に欄が増えているはずなので、10月以降に配られたら、そこを飛ばさずに書いてください。
あなたの数字で確かめる手順
1. 12月31日時点で23歳未満の扶養親族がいるかを確認する。 0歳から22歳までです。扶養控除の対象かどうかは関係ありません。生計を一にしていることと、子の合計所得金額が62万円以下(収入が給与だけなら年収136万円以下)であることは確認してください。青色事業専従者給与を払っている子は数えられません。
2. 保険会社から届く控除証明書を、新契約と旧契約に分ける。 分かれ目は契約日で、平成24年1月1日以後に締結した保険契約等が新契約です(所得税法76条5項)。証明書のどこに書かれているか、どういう言葉で区分されているかは保険会社によって違うので、迷ったら契約日を見てください。旧契約だけなら、この特例は使えません。
3. 新生命保険料の年間支払額を表に当てはめる。
30,000円以下 … 全額
30,000円超 60,000円以下 … 保険料 × 1/2 + 15,000円
60,000円超 120,000円以下 … 保険料 × 1/4 + 30,000円
120,000円超 … 一律 60,000円
4. 介護医療保険料控除と個人年金保険料控除を足す。 3つの合計が12万円を超えるなら、超えた分は切り捨てられます。介護医療と個人年金の合計が80,000円に達していれば、上乗せは残りません。
5. 増えた控除額に、自分の限界税率と1.021を掛ける。 これが減る所得税です。20,000円まるごと増えたとしても、税率10%なら2,042円です。
6. ふるさと納税の上限額は、この改正では計算し直す必要がありません。 ⑦のとおり、式に入る数値が動かないためです。
まとめ
- 令和8年分と令和9年分の所得税にかぎり、23歳未満の扶養親族がいる人の一般生命保険料控除の限度額が4万円から6万円になる(租税特別措置法41条の15の5)
- 上乗せが満額の20,000円になるのは、新生命保険料が年120,000円(月10,000円)からである。 年60,000円なら10,000円、年20,000円以下では0円
- 令和6年の一人当たりの一般生命保険料控除額は3.6万円で、改正前の限度額4万円にも届いていない。適用者割合も令和3年の69.5%から令和6年の65.5%へ下がり続けている
- 三つの控除を合わせた限度額12万円は据え置かれた。 介護医療保険料控除と個人年金保険料控除の合計が80,000円(両方とも満額)なら、上乗せは1円も残らない
- 旧契約(平成23年12月31日以前)だけを持っている人には効かない。 読み替えられているのは所得税法76条1項の第一号と第三号で、旧契約だけの第二号は動いていない
- 扶養控除が使えない16歳未満の子も数える。 判定は12月31日の現況(措置法41条の15の5第2項)
- 共働きなら夫婦の両方が使える(措通41の15の5−1)。世帯としては最大40,000円の所得控除増
- 個人住民税は1円も増えない。 したがってふるさと納税の控除上限額も動かない。給与収入400万円から1,000万円まで、差はすべて0円だった
- 年末調整では、保険料控除申告書に扶養親族の氏名と個人番号を書く。 令和8年分の様式は「10月頃公開予定」(国税庁)
- 金融庁は2026年8月31日、令和9年度税制改正要望で恒久化を求めた。 ただし「恒久措置とする。」という要望に1年かぎりの措置で応じる形が2年続いている(令和7年度要望・令和8年度要望)。結論が出るのは12月ごろの税制改正の大綱より後